ストリングスのハーモニー連結のコツ
①共通音は保留する
②第3音、第7音、テンションは重ねない(根音、第5音は重ねてもよい)
③導音(主音の長7度上の音)は主音へ、第7、9、13音は二度下行させる。
④メロディと一番下の声部はなるべく反行させる。
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ブラスのハーモニー
ポピュラー・ミュージックのブラス・アレンジで最も多く使われるのは、ストリングス同様オクターブ・ユニゾンでしょう。最も多い組合せとしては、トランペットとトロンボーンが挙げられますが、その他トランペットとトランペット、トランペットとアルト・サックス等もよく使われます。気をつけることは、そのフレーズがそれぞれの楽器のどの音域を用いることになるのか、また、その楽器のその音域はそのフレーズに適しているかどうかということです。
オクターブ・ユニゾンの次に多く用いられるブラス・アレンジは、コード演奏です。
3管のボイシング
ポピュラー・ミュージックのブラス・アレンジの場合、3管を用い、トライアド(3和音)で動くというアレンジがよく聴かれます。トライアドのボイシングの種類は、2種類になります。
そのままクローズの形(和音の構成音が隣り合っている)で用いる方法。
上から2番目の音をオクターブ下げる、“ドロップ2”と呼ばれるオープン・ボイシングです。
4管のボイシング
4管で4和音を演奏する場合、大きく分けて5つほどの方法が考えられます。
トライアドの時と同様クローズにボイシングする方法
上から2番目の音を1オクターブ下げる“ドロップ2”
上から3番目の音を1オクターブ下げる“ドロップ3”
上から2番目と4番目の音を1オクターブ下げる“ドロップ2&4”
※テンションを用いる場合はルートを省いて9thを配置します。上2声が短二度になるような場合は避けてください。
オープン・ボイシングを用いる方法として、“スプレード・ボイシング”がある
スプレード・ボイシングの作り方
①一番下の声部にルートを置く
②内声の2声部は第3音と第7音を置く
③トップの音は必然的に第5音かテンションになる
※このボイシングの場合は、ストリングスのハーモニーで述べたように横の流れ(コードの連結)が非常に大切になります。なるべくなめらかに連結できるよう、共通音は保留し、特に内声ではあまり跳躍するような進行は避けましょう。このため、内声が第5音やテンションになることもあります。
5管のボイシング
基本的な5管のボイシングは、4和音のクローズ・ボイシングにメロディ(トップ・ノート)を1オクターブ下で重複させて作ります。このボイシングは、ダブル・リードと呼ばれています。
さらに高度なテクニックとして、この方法で作られたオクターブ下に重ねられている音をテンションに変えるというボイシングがあります。多く用いられるのは、メロディがコードのルートの音である時、オクターブ下に9thのテンションを入れるというボイシングや、メロディがテンションで、オクターブ下に別のテンションを置くボイシングなどです。
次に“Voicing in 4th”と呼ばれる、4度音程が積み重ねられたボイシングをご紹介しましょう。
“四度配置”の作り方
①そのコードのコード・スケール(Available Note Scale)を確認する
②そのコード・スケール内の音を、メロディから順に下へ4度間隔にボイシングする。
この時、アボイド・ノートのため、4度にできない場合は3度にしてもかまいませんが、続けて2回3度音程になることは避けましょう。また各声部間で♭9thの音程が作られることも避けます。そして、ドミナント7thコードの時には必ず第3音と第7音(トライ・トーン)を入れましょう。そうしないと、ドミナント・セブンスの機能が失われてしまうからです。
※ダブル・リード、クローズ、ドロップ2、ドロップ2&4、ドロップ3、四度配置の6つの配置方法がある。
6管以上のボイシング
6管の場合、4声のクローズの上2声をオクターブ下で重ねて6声部にしたり、ドロップ2で4声を作り、さらに上2声をオクターブ下で重ねる一般にオミット2と呼ばれているボイシングなどが使用されます。
またVoicing in 4thにする時は、まず5声のVoicing in 4thを作り、それにメロディの音(トップの音)を1オクターブ下、あるいは1オクターブ上で重ねてください。
8管以上のボイシングは、まずブラス・セクション4本(サックスを除く)を4ウェイ・クローズあるいはドロップ2でボイシングし、その4声のパートの中から任意のラインを選び、そのラインをサックス・セクションのトップのメロディにして4ウェイ・クローズあるいはドロップ2でボイシングするという方法が、標準的なボイシングの仕方になります。
メロディに対するハーモニーのつけ方
メロディというものは、コード・トーンであるものか、ノン・コード・トーンであるものかにまず分かれる。ノン・コード・トーンは、テンションであるものとテンションでないものに分かれる。
ここではノン・コード・トーンに対してどういうハーモニーをつけるかについて述べていきます。
一番簡単な方法としては、そのノン・コード・トーンの下にある最も近いコード・トーンを省いてハーモナイズする方法になりますが、ここでは、さまざまなアプローチ・ノート(全音、あるいは半音でコード・トーンに進行している音)としてハーモナイズする方法を述べていきたいと思います。
パラレル・アプローチ
全音進行で、次のコード・トーンへアプローチしている音に対して使われます。次のコードへ全て全音で進行するようにハーモナイズします。
クロマティック・アプローチ
半音進行で、次のコード・トーンへアプローチしている音に対して使われます。次のコードへ全て半音で進行するようにハーモナイズします。パラレル・アプローチをクロマティック・アプローチを連続して使うこと(ダブル・クロマティック・アプローチ)もできる。
ディミニッシュド・アプローチ
半音あるいは全音でコード・トーンへアプローチしており、さらにそのアプローチ・ノートのメロディが、そこに設定されたコードをメジャー・スケールにした場合の第2音、第4音、第7音のどれかにあてはまる場合にのみ使うことができます。ただしターゲットとなるコードがディミニッシュの場合は使うことができません。これらの条件を満たしている場合は、メロディをトップにしてディミニッシュ・コードにハーモナイズしてください。
※紹介した以外にもいくつかアプローチの方法はありますが、まずはこれら3種類のアプローチの手法をきちんと理解しましょう。
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リズム体の中でのブラス・アレンジ
①コーラスの中でのリズム・パターンとしてのブラス・アレンジ
②コーラスの頭のきっかけとしてのブラス・アレンジ
③コーラスの終りのキメとしてのブラス・アレンジ
ポップスやロックで頻繁に使われるブラス・アレンジの手法は、ほぼこの3つの要素に分けることができます。
リズム・パターンとしてのブラス・アレンジ・ルール
①毎小節、ブラスを出す。毎回、同じタイミング、同じリズムで出す(できれば、音型も似せる)
毎小節ブラスを出したり、リズムを同じにしたり、音型を似せるのは、パターン化するためです。リズム・アレンジをパターン化する作業はとても大切なことなので、よいパターンを作ることができれば、とてもよいノリを作り出すことができるのです。逆に、悪いパターンはノリをまったく感じさせません。
②ブラスのフレーズを、1拍あるいは2拍以内に納めること
フレーズが長すぎると鋭さがなくなるので、なるべく短いフレーズにします。短いほうがメロディの邪魔をしないので、アレンジもすっきりします。
③1小節の中の前半か後半かのどちらかに片寄らせること
小節の変わり目を強調し、ドライブ感(ノリ)を出すためにはこうするのがよいでしょう。
④16分休符を要素として必ず使うこと
16分休符を要素として入れると、ブラスの鋭さが強調され、フレーズの切れ味がとてもよくなります。
きっかけとしてのブラス・アレンジ・ルール
①コーラスが始まる1小節前(③拍目前後)からブラスのフレーズがスタートし、コーラスが始まった1小節目の1拍以内にフレーズが終わるようにする。
コーラスの頭を強調するための助走的な意味で、ブラスのフレーズを先行させます。
②コーラスが始まる1小節前のフレーズの音型は、上行するか下行するかはっきりさせる
上行、下行の形をはっきり出した方が、ブラス・フレーズの動きもはっきりしてわかりやすくなります。
③フレーズの最後の音はスタッカートで切るか、グリス・ダウンするのかのどちらかにする
ブラスのフレーズの締めくくりとして変化をつけるためです。ただ伸ばしただけだと間が悪いことが多いので、このようにします。
キメとしてのブラス・アレンジ・ルール
①キメのフレーズは1小節内で作り、4拍目は必ず休符として残す
キメのフレーズをだらだら長くしないためと、その後の余韻を休符で強調するためです。
②1小節前からキメのフレーズをスタートさせてもよい
曲によっては助走のない方が良い場合もありますが、多くは助走があった方がよりキメが強調されます。
③助走フレーズ(キメの1小節前)は、単音あるいはオクターブ・ユニゾンで、キメの小節のフレーズは和音で行う。トップ・ノート(一番上のメロディ)は、なるべく高い音域に持っていく。
助走部分よりもキメのところを目立たせるため、キメはなるべく和音にして音圧をかせいだ方がよいでしょう。
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バリトン・サックスとベースの組み合わせ型ブラス・アレンジ・ルール
①ベース・フレーズと一部ユニゾンか、全部ユニゾンにする
こうすることによってベース・ラインを強調して、ノリを出すことができます。
②バリトンと他のブラスは対話をするようになるべく交互に用いる
音色の対比ができ音域も幅広く使えるので、サウンドにも幅ができておもしろくなります。
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ブラス、ストリングス同時使用時におけるアレンジの鉄則
①ストリングスを和音で使った場合、ブラスは単音で使う
②ブラスを和音で使った場合、ストリングスは単音で使う
③両方とも単音で使う場合、大きなリズムで動くものと、細かいリズムで動くものとに分ける。あるいは、音域に差をつける(高い音域と低い音域)
④ブラスとストリングスが交互に出てくるようにアレンジする